佐藤善六漆器店

佐藤善六漆器店

  • 秋田県湯沢市

略歴

1872年創業の川連漆器佐藤善六漆器店。
現在は6代目 佐藤徹氏が継承し、秋田県漆器工業協同組合の組合長を務めている。川連漆器は堅牢で実用的な漆器作りに定評があり、1976年に国の伝統工芸品として認定され、1996年には県の伝統工芸品に。1998年、2000年の全国漆器店では内閣総理大臣賞を受賞している。

鎌倉時代に、源頼朝の家人で稲庭城主の小野寺重道公の弟である道矩公が、家臣に命じて武具に漆を塗らせたのが始まりとされています。17世紀中頃には本格的に漆器産業が始まり、川連村を中心に約26軒が椀師稼業を営んだと言われています。1815年には藩の許可を得て、朱塗りの漆器作りが始まり他国へも販路を築き、江戸時代後期には藩の保護政策のもと、椀や膳、重箱など幅広い漆器がつくられるようになりました。

また、豊富な森林資源と、皆瀬川が木材の集積地に適していたという恵まれた環境のもと、漆器の産地としてさらに発展していきます。川連漆器の特徴は、柿渋と炭粉を混ぜたものを下地として塗り、乾燥させ研ぐ「地炭つけ」の後、柿渋を塗り更に研ぐ「柿研ぎ」、その後生漆を塗る「地塗り」といった下地工程の丹念さによる堅牢さにあります。仕上げは「花塗り」と呼ばれ、乾燥後に研磨せず刷毛で塗り上げる高度な技法で、塗りムラが出ないように刷け目を見せずに漆を均等に塗る、熟練した職人技が要求される仕上げ塗りです。

川連漆器の生産は、工程ごとに分業されています。椀や鉢などの丸物にはブナやトチの木を用い、重箱などの角物や丸盆などの曲物にはホウ、シナ、スギ、ヒバなどが使われています。丸物の木地を製作する職人は挽師と呼ばれます。佐藤善六漆器店は、塗師として大きく下地、下塗り、中塗り、上塗りの4工程を行っています。上塗りである「花塗り」には研磨の工程がないため、埃がつかないよう熟練した塗師以外は部屋に立ち入り禁止とし、細心の注意が払われます。

佐藤善六漆器店を始め、川連漆器では「沈金」や「蒔絵」など加飾が施された漆器も作られていますが、当店では焼き物に合う、丈夫で普段づかいの漆器を提案したいという考えから、日々の食卓に必要な椀類を中心に飯碗と合わせ易いシンプルで使い易いものを選びました。漆器に共通して言える事ですが、本来漆を塗らずに使われていた木地を食べ物が染み込まないように、そしてより丈夫に長持ちさせるために漆が塗られるようになりました。また、漆塗膜には殺菌・静菌効果があり、また粘着性効果が高い事から、漆が食器の塗りの素材として用いられたのは自然の流れと言えるでしょう。漆器というとどうも敷居が高いと思われる方も少なくはないかと思います。きちんとした漆器を使いたいと思いながら、ついつい後回しになっている方も多いでしょう。お茶碗や取り皿など徐々に揃えて頂き、ご自身の食べる量やお茶碗や汁椀に合った汁椀やお茶碗をお選び頂ければと思います。昔から、お椀は親指と人差し指で作った半円に収まる大きさが適していると言われます。そうすると多くの方は4寸(12cm)前後の大きさになるのではないでしょうか。お味噌汁からお野菜を多く摂る方は少し大き目でもいいかもしれません。また飯碗を漆器にされるのもお薦めいたします。本来、焼き物が普及していない時代には全て漆器で食事をしていましたが、漆器の飯碗はご飯粒がつきにくく、持った時の軽さや木のぬくもりから漆器を飯碗として使われる方が近年でも増えていると聞きます。

佐藤善六漆器店は、雅さが際立つ漆器というより日々の生活に寄り添った漆器作りをされています。また比較的買い易い値段帯が設定されていることから、より身近に手にとって頂けるのではないでしょうか。安いから質が悪いというのではなく、材料が県内で手に入るために比較的安く抑えられる事。また工程をいくつか省く事で、工賃が下げられる事。しかし工程を省きながらも丈夫さを保つために下地づくりに手をかけるなどの努力がされています。まずは汁椀や飯碗から漆器選びを始めてはいかがでしょうか。

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