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エギュヴィーヴポタリー
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南フランスのモンペリエとニームの間に位置するエギュ・ヴィーヴという町に工房があります。カマルグの伝統的な闘牛が盛んで、ラングドック地方の暮らしが色濃く残り短編映画祭やクラシック音楽祭、そして数多くの展覧会も開かれる芸術的な町エギュ・ヴィーヴの地名を取ったエギュヴィヴ・ポッタリー。工房の創設者であるリシャール・エステバンは、陶工であると共にそれらの芸術にも多大な尽力を今日まで注いできました。
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1955年生まれのリシャール。モンペリエの貧しい家に生まれ育ったリシャールは、自然に近い環境で働く事を夢見ていました。16歳の時にこれだと思えた陶芸の道に出会い、陶器の町ヴァロリスにある伝統的な工房のヴァルボンヌのサルタラマキアポッタリー、そしてフカー・ジュルダンのもとで働き轆轤を学びました。当時のヴァロリスの陶工たちは、歩合制で轆轤をひいた数に応じて賃金が決まったため、リシャールは正確かつ数を引くことに努めたと言います。そして轆轤士として力をつけたのち、1975年に焼き物の産地として有名なドローム県にある南フランスの歴史的かつ伝統的な工房クリウスクラポッタリーで働き始めました。リシャールが師と仰ぐフィリップ・スーディヴのもとで、轆轤士としてはもちろんのこと昔ながらの薪窯の窯入れ士として窯焚士として、装飾や絵付けの楽しさなど南フランスの伝統的なスリップウェアとは何なのかを学びました。
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1979年の創設以来、南フランスの伝統的な焼き物を作っているエギュヴィヴポッタリー。現在はリシャール、轆轤士のアルノー、型ものや装飾を担当するカティアの3人で焼き物作りをしています。笑いの絶えないゆったりした雰囲気の工房では、それぞれが担う作業を冗談を言いながらも手を止める事なく淡々と進められています。仕事と人生を楽しむ事のどちらも大切だというのが伝わってくるエギュヴィヴポッタリー。
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朝は定時で仕事が始まり、お昼は皆自宅に帰宅して昼食をとりしっかり休憩する時間があり、午後は定時までしっかりと仕事をする。仕事の後は子供たちにバトミントンを教えているという轆轤士のアルノー。窯主のリシャールは年に一度。大好きな車のラリーに2週間ほど出るそうです。そんな陶工たちの体と心の充実ぶりが仕事に出るのでしょう。
エギュヴィヴポッタリーは、フランス政府によりEPVと呼ばれる無形文化財企業(Entreprise du patrimoine vivant)として認定されています。フランスの伝統を象徴し稀少な技能を受け継ぐ手工業の優れた技能に対し、企業の規模の大小によらずフランス政府が厳格な審査を行い発行する唯一の認定を受けたエギュヴィヴポッタリー。主にフランスのスリップウェアと呼ばれる陶土に釉薬をかけた陶器を作っています。フランスのスリップウェアは、作り手の日々の楽しさを表現すると言われています。その日々の楽しさが南フランス独特のゆったりしたリズムで表現されているエギュヴポッタリーの器です。
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略歴
窯主 リシャール・エステバン 1955年生まれ
16歳で陶芸の道に入る。陶器の町ヴァロリスの伝統的な工房 サルタラマキアとフカール・ジュルダンで轆轤士として働いたのち、ドローム地方のクリウスクラポッタリーのフィリップ・スーディヴのもとで働く。轆轤士としてだけではなく、薪窯でも窯入れ、窯焚き、釉薬についてなど伝統的なスリップウェアを学ぶ。1979年にエギュヴィヴポッタリーを立ち上げる。
無形文化財認定企業