キマノ陶器
木間伸哉・彩ご夫妻によるキマノ陶器。
伸哉さんは益子窯指導所の研究生として焼き物作りを益子で学ばれたのち、沖縄の読谷村にある横田屋窯(ゆくたやがま)の知花實(みのる)氏に師事しました。彩さんは、同時期にイギリスのウィンブルドンカレッジオブアーツロンドンで学ばれたのち卒業。同じく沖縄の読谷村にある横田屋窯(ゆくたやがま)の知花實氏に弟子入りし、焼き物づくりを学ばれました。
お二人とも沖縄のやきもの文化や暮らし、そこに生まれ育つ沖縄の人々への尊敬を持ちつつも、沖縄では原料となる土に限りがあるのも現実でした。限りある沖縄の土はやはり沖縄の陶工たちがつかうべきだろうとし、沖縄の土地を離れ益子で焼き物作りを始めます。伸哉さんが益子の窯指導所で学ばれたこともあり、お知り合いがいらっしゃるということ。そして、益子は原料となる土も赤松も、登り窯を新たにつくる際の周囲の人々の理解など、焼き物作りをする環境としてはやはり焼き物の地である益子はとても素晴らしかったとのこと。現在お使いの窯も、引退された窯の比較的新しいガス窯を運よく譲り受けることができたそうです。私たちにキマノ陶器のお二人をご紹介くださったのも益子の大誠窯の大塚さんでした。
お二人は栃木県益子町生田目に土地を購入し工房とその先にご自宅を構えられました。
益子の原料を用いて修行をされた沖縄のやきもの(やちむん)の技法をもとに、お二人の焼き物作りをされています。身につけた技法を否定するわけでも、そのまま取り入れるわけではなく、例えば沖縄のマカイと呼ばれるお碗の形だと飯碗としては若干浅めの作りですが、木間さんはたくさん食べたいからと深めの形で飯碗を作っていらっしゃいます。それをマカイと呼ぶとどうしても語弊がでてきてしまうので、キマノ陶器では飯碗と呼んでいます。修行時代に得た技法に敬意を評しながらも、ご自身たちの焼き物作りをとても自然な形と流れでされています。
仕事が好きなんだなというのはお話を伺っても、また沖縄の土とは異なる性質の益子の土と釉薬との相性を見るために試作があちらこちらにある様子を拝見しても感じます。テストピースから良い点と改善点を考え、次に確実に生かす。作り手の方々のお話を伺う際に、どういった点にこだわりをお持ちかを理解したく質問させて頂いています。形や釉薬、仕事に対する考えなど。皆さんご自身からはあまりお話にならないので、そんな一つ一つにお答え頂きそれをお客様にお伝えできればいいと思っていますが、木間さんご夫妻のものづくりに対するお考えはお二人ともお若いですが、とてもしっかりされていました。そして人として健全であると感じました。
必要以上に目の前のことや過去に逆らうことなく、現実を受け入れながらも頑固に目標に向かって淡々と日々前へ進むという姿勢が、お二人の焼き物からも伝わってきます。気をてらった器ではなく、気づけば日々毎日食卓でつかっている健やかな器そんな印象を器からも強く受けます。形の安定感や造形の穏やかさを是非手にとって感じていただければと思います。
工房前にはヤギの悟空がのんびりと草を食べていました。今後は鶏など家畜を増やしていきたいとのこと。仕事と暮らしを両立させたい。民藝でいうところの、仕事=暮らしというのが木間さんから伝わってきます。今のものづくりだけでなく、是非今後のお二人の器づくりにもご注目頂ければと思います。
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