湯町窯
出雲湯の里と呼ばれる名湯、玉造温泉のすぐそばに湯町窯はあります。
1922年(大正11年)創業の湯町窯は、現在窯主の3代目 福間琇士氏とご子息で4代目の庸介氏により継承されています。工房と展示場が繋がった湯町窯に訪れると、入り口にはきちんと手入れされた緑や花々が客人を迎えてくれます。店内には、黄釉(きぐすり)と呼ばれる釉薬を使った黄色い器と海鼠釉(なまこゆう)と呼ばれる釉薬を使った青い器が所狭しと並んでいて、訪れる人を一瞬で虜にしてしまいます。
客人を虜にするのは、美しい器だけではありません。
名陶と呼ばれ、2011年日本民藝館賞を受賞された湯町窯3代目の福間琇士さんがユーモアたっぷりに迎えて下さいます。そしてその動きがおしゃべりしながらも本当に機敏で美しいのです。福間さんのお仕事は、正確で無駄が無く美しい手仕事だと評判ですが、それは器づくりだけでなく、全てに共通するようです。
こちらは、窯にお邪魔した際に頂いたお抹茶とゼリー。福間氏自ら出して下さいました。もちろん使われていた器は、湯町窯のもの。前記した黄釉と海鼠釉の器にスリップが描かれています。お伺いしたのは夏でしたが、小皿に載ったゼリーが何とも涼しげで美しく、改めて「美しい実用品」を実感した瞬間でした。
黄釉は、柳宗悦も「出雲と言えば黄釉の焼物を忘れてはならない」と言うほど、県内で採取される石が原料となっています。海鼠釉は、藁の灰を原料とする灰釉(かいゆう)で、青の濃淡や白が入り交じった複雑な流紋や斑点の様子がナマコに似ていることから、そのように名付けられたそうです。
そして湯町窯と言ったら忘れてはならないのが、湯町窯の代名詞ともなったエッグベーカーです。福間琇士さんのお父様の代にバーナード・リーチより手ほどきを受けて完成したと言われ、エッグベーカーに描かれているスリップ模様は湯町窯の商法登録にもなっています。直火にかけられるので、目玉焼きだけではなく、海老やマッシュルームのアヒージョ、バーニャカウダーソースなど色々なお料理にお使い頂けます。
湯町窯の器は実用品でありながら、器に妖精が宿っているかの様な躍動感があります。各種お皿や小鉢、カップなどもそうですが、ポットや花器なども例外ではありません。そういったものを一つ一つご紹介していけたらと思っています。
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